然《そ》うした世界に憧憬して、煙のような夢の如な天地を想見して、遂に温かい父母の膝下を去ったのです。
果たして自由の世界を発見する事を得ましたでしょうか。
婦人記者となる
社会に出てから、仕事は私にとって、案外困難な事でも御座いませんでした。然し自分の純白であった感情を斯くまで損なわれる事とは思いもよらなかったのでした。
最初に与えられた仕事というのは、名士や夫人を訪問する事で、余り六ヶ敷《むずかし》い事とも思われませんが、中中然うでないのです。然し初めの二三日は何の経験もないので、黙って卓子《テーブル》の前にあって、雑誌の切り抜き等をさせられていました。編輯長や主任に対しては、唯々満身敬意の念を持って、御意の侭に働きました。然し想像した新聞社というものは、目の回る程忙しい活気の満ち満ちたものだと思って居りましたにも係わらず、毎日|凝《じっ》としているので、苦痛で苦痛で堪えられません。すると、××主任もそれを察して下すって『然うしているのも苦しいでしょうから、何処か訪問して御覧なさい。』と、嬉んで話し相な人を、皆で列挙してくれました。イの一番に伺ったのは、慥か岡田
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