ら、譬え一時間でも二時間でもお目にかかり度くて参りました」
私はそういって坐った。
「あははははそうなければ信用の恢復ができませんからね……」
 師は愉快そうに笑った。
 奥さんは桑摘みにゆかれてお留守だった。
 百合子ちゃんへおみやげの折紙を出して上げると、百合子ちゃんは真面目くさってそれを開け初[#「初」にママの注記]めた。開けて見てさも心から嬉しそうに、
「けっけっけ!」と笑った。
 私はそんなに悦んで貰った事がない。私はそれだけで今日の訪問にすっかり満足を感じた。
 どんな御馳走よりも賛辞よりも、その子供の、「けっけっけ!」という笑い声の純真さに打たれた。
 絲子さんという姉さんの方の子が学校から帰ってくる。姉妹で折紙の奪い合いを始める。
 奥さんも帰って来られた。私は初対面だった。質実な素朴な、心の細やかそうな、そして勝ち気らしい印象を受けた。
 師は昔を懐かしそうにぽつりぽつりと話し出される。今は詩人としてよりも地主として接していられる当面の問題について色々話して下さる。私は時計を気にしいしい時間を過ごした。日の暮れない中に故郷へ帰ろうと思うからだった。
「少し早く家を出て
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