を労するものだ。彼女達も嘗ては球のような新しい身をもって生まれ、何よりも母親たちの恐れる麻疹、天然痘、疫痢、ジフテリア等に、幾種もの小児病を幸いにも無事に経過して来た、尊い肉体である事は、人として異《かわ》りないものを。                        

 湿地の棒杭の腐れから生える、あの淡紅《うすあか》い毒茸のような生存から、何時の日彼女等は救われるだろう――。
 豊饒な土壌に根を下ろして、憎い程太い幹をして、終日太陽の顔を正視するあの向日葵の花と咲いて、心ゆくばかり日光を吸収する事のできる――その日の為、彼女等よ、花苑は日に新しく耕されつつあるであろう。        



底本:「空にむかひて」 武蔵野書房
   2001(平成13)年1月21日第1刷発行
底本の親本:「婦人公論」第10年8号、中央公論社
   1925(大正14)年8月1日発行
入力:林 幸雄
校正:小林 徹
2001年3月19日公開
2001年9月3日修正
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