わ》っていた鬼《おに》が口を出《だ》して、
「いいや、ああはいっても、その場《ば》になると横着《おうちゃく》をきめて出《で》てこないかも知《し》れません。約束《やくそく》を違《ちが》えさせないために、何《なに》か、しち[#「しち」に傍点]に取《と》っておいてはどうでしょう。」
 といいました。
 おかしらは、
「なるほどそれはいいだろう。」
 とうなずきました。
「それでは何《なに》がいいだろう。何《なに》を取《と》り上《あ》げておいたものだろう。」
 と鬼《おに》どもは、わいわい相談《そうだん》をはじめました。
「烏帽子《えぼし》がいい。」という者《もの》もありました。
「斧《おの》はどうだ。」という者《もの》もありました。
 おかしらはみんなの騒《さわ》ぐのを止《と》めて、
「いや、何《なに》よりもいちばん、あのじいさんのほおの瘤《こぶ》を取《と》るのがいいだろう。瘤《こぶ》は福《ふく》のあるものだから、じいさんのいちばんだいじなものに違《ちが》いない。」
 といいました。
 おじいさんは心《こころ》の中《なか》では、「しめた。」と思《おも》いながら、わざとびっくりした風《ふう》を
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