た。
「どうした、じじい、早《はや》く出《で》てこい。」
 手下《てした》の鬼《おに》どももわいわいいいました。
 お隣《となり》のおじいさんは、それを聞《き》いて、「ここだ。」と思《おも》って、こわごわうろの中からはい出《だ》しました。
 するとひとりの鬼《おに》が目《め》ばやく見《み》つけて、
「やあ、来《き》ました、来《き》ました。」
 といいました。
 おかしらは大《おお》よろこびで、
「おお、よく来《き》た。さあ、こっちへ出て、踊《おど》れ、踊《おど》れ。」
 と声《こえ》をかけました。
 おじいさんは、おっかなびっくり立《た》ち上《あ》がって、見《み》るからぶきような手《て》つきをして、でたらめな踊《おど》りを踊《おど》りました。おかしらの鬼《おに》はふきげんな顔《かお》をして、
「今日《きょう》の踊《おど》りは何《なん》だ。まるでまずくって見《み》ていられない。もういい。帰《かえ》れ、帰《かえ》れ。おい、じじいに、ゆうべのあずかりものを返《かえ》してやれ。」
 とかんしゃく声《ごえ》でいいました。
 すると下座《しもざ》の方《ほう》から若《わか》い鬼《おに》が、あずかって
前へ 次へ
全15ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング