い山の中には、もうきこりの木を切《き》る音《おと》もしません。木のうろの外《そと》は、一|面《めん》真《ま》っ暗《くら》やみの中に、すさまじいあらしが、うなり声《ごえ》を立《た》てて通《とお》っていくだけです。
 おじいさんはこわくって、こわくって、たまらないので、夜通《よどお》し目《め》も合《あ》わずに、うろの中に小《ちい》さくなっておりました。
 夜中《よなか》になって、雨《あめ》がだんだん小降《こぶ》りになり、やがてあらしがぱったりやみますと、はるか高《たか》い山の上から、なんだか大《おお》ぜいがやがや騒《さわ》ぎながら、下《お》りてくる声《こえ》がしました。
 おじいさんは今《いま》まで一人《ひとり》ぼっちで、寂《さび》しくってたまらなかったところですから、声《こえ》を聞《き》くとやっと生《い》き返《かえ》ったような気《き》がしました。
「やれやれ、お連《つ》れが出来《でき》て有《あ》り難《がた》い。」
 といいながら、そっとうろの中から顔《かお》を出《だ》してのぞいてみますと、まあどうでしょう、それは人ではなくって、ふしぎな化《ば》け物《もの》が、何《なん》十|人《にん》とな
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