くぞろぞろ出《で》てくるのです。青《あお》い着物《きもの》を着《き》た赤鬼《あかおに》もいました。赤《あか》い着物《きもの》を着《き》た黒鬼《くろおに》もいました。それが山猫《やまねこ》の目《め》のようにきらきら光《ひか》る明《あ》かりを先《さき》に立《た》てて、どやどや下《お》りてくるのです。
 おじいさんは肝《きも》をつぶして、またうろの中へ首《くび》を引《ひ》っ込《こ》めてしまいました。そしてぶるぶるふるえながら、小《ちい》さくなって息《いき》を殺《ころ》していました。
 鬼《おに》どもはやがて、おじいさんの居《い》るうろの前《まえ》まで来《き》ますと、がやがやいいながら、みんなそこに立《た》ち止《ど》まってしまいました。おじいさんは、「おやおや。」と思《おも》いながら、いよいよ小《ちい》さくなっていますと、そのうちのおかしららしいのが、真《ま》ん中《なか》に座《すわ》って、その右《みぎ》と左《ひだり》へ外《ほか》の鬼《おに》たちがずらりと二《ふた》かわに並びました。よく見《み》ると目《め》の一つしかないのや、口のまるでないのや、鼻《はな》の欠《か》けたのや、それはそれは何《なん》ともいえない気味《きみ》の悪《わる》い顔《かお》をした、いろいろな化《ば》け物《もの》が押《お》しくらをしておりました。
 そのうちお酒《さけ》が出《で》ますと、みんなお互《たが》いに土器《かわらけ》のお杯《さかずき》をうけたり、さしたり、まるで人間《にんげん》のするとおりの、楽《たの》しそうなお酒盛《さかも》りがはじまりました。
 お杯《さかずき》の数《かず》がだんだん重《かさ》なるうちに、おかしららしい鬼《おに》は、だれよりもよけいに酔《よ》って、さもおもしろそうに笑《わら》いくずれていました。すると下座《しもざ》の方《ほう》から、一人《ひとり》の若《わか》い鬼《おに》が立《た》ってきて、お三方《さんぼう》の上に食《た》べ物《もの》をのせて、おそるおそるおかしらの鬼《おに》の前《まえ》へ持《も》って出ました。そして何《なに》かわけの分《わ》からないことをしきりにいっているようです。おかしらの鬼《おに》もお杯《さかずき》を左《ひだり》の手に持《も》って、おもしろそうに笑《わら》いながら聞《き》いています。その様子《ようす》は少《すこ》しも人間《にんげん》と違《ちが》ったところはあり
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