《き》いた。ではわたしもさっそく行って踊《おど》りを踊《おど》りましょう。おじいさん、その鬼《おに》の来《く》る所《ところ》がどこだか、教《おし》えておくんなさい。」
といいました。
「ああ、いいとも。」
とおじいさんはいって、くわしく道《みち》を教《おし》えてやりました。
おじいさんは大《たい》そうよろこんで、あたふた山へ出ていきました。そして教《おそ》わった木のうろの中へ入《はい》って、こわごわ鬼《おに》の来《く》るのを待《ま》っていました。
なるほど、話《はなし》に聞《き》いたとおり、夜中《よなか》になると、何《なん》十|人《にん》となく青《あお》い着物《きもの》を着《き》た赤鬼《あかおに》や、赤《あか》い着物《きもの》を着《き》た黒鬼《くろおに》が、貂《てん》の目のようにきらきら光《ひか》る明《あ》かりをつけて、がやがやいいながら出《で》てきました。
やがてみんなはゆうべのように木のうろの前《まえ》に座《すわ》って、にぎやかなお酒盛《さかも》りをはじめました。
その時《とき》おかしらの鬼《おに》が、
「どうした。ゆうべのじいさんはまだ来《こ》ないか。」
といいました。
「どうした、じじい、早《はや》く出《で》てこい。」
手下《てした》の鬼《おに》どももわいわいいいました。
お隣《となり》のおじいさんは、それを聞《き》いて、「ここだ。」と思《おも》って、こわごわうろの中からはい出《だ》しました。
するとひとりの鬼《おに》が目《め》ばやく見《み》つけて、
「やあ、来《き》ました、来《き》ました。」
といいました。
おかしらは大《おお》よろこびで、
「おお、よく来《き》た。さあ、こっちへ出て、踊《おど》れ、踊《おど》れ。」
と声《こえ》をかけました。
おじいさんは、おっかなびっくり立《た》ち上《あ》がって、見《み》るからぶきような手《て》つきをして、でたらめな踊《おど》りを踊《おど》りました。おかしらの鬼《おに》はふきげんな顔《かお》をして、
「今日《きょう》の踊《おど》りは何《なん》だ。まるでまずくって見《み》ていられない。もういい。帰《かえ》れ、帰《かえ》れ。おい、じじいに、ゆうべのあずかりものを返《かえ》してやれ。」
とかんしゃく声《ごえ》でいいました。
すると下座《しもざ》の方《ほう》から若《わか》い鬼《おに》が、あずかって
前へ
次へ
全8ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング