《ばん》はきっと来《こ》い、瘤《こぶ》を返《かえ》してやるから。」
こういいながら、みんなあわててどこかへ消《き》えていきました。
おじいさんはその後《あと》で、そっと顔《かお》をなでてみました。そうすると、長年《ながねん》じゃまにしていた大きな瘤《こぶ》がきれいに無《な》くなって、後《あと》はふいて取《と》ったようにつるつるしていました。
「これは有《あ》り難《がた》い。ふしぎなこともあるものだ。」
おじいさんはうれしくってたまらないので、早《はや》くおばあさんに見《み》せてよろこばしてやろうと、首《くび》を振《ふ》り振《ふ》り、急《いそ》いでうちまで駆《か》けて帰《かえ》りました。
おばあさんは、おじいさんの瘤《こぶ》がきれいに取《と》れているので、びっくりして、
「おや、瘤《こぶ》をどこへやったのです。」
と聞《き》きました。おじいさんはこういうわけで、鬼《おに》がしち[#「しち」に傍点]に取《と》って行《い》ったのだといいました。おばあさんは、
「まあ、まあ。」
といって、目《め》をまるくしておりました。
二
さてこのお隣《となり》のうちにも、これは左《ひだり》のほおに、やはり同《おな》じような瘤《こぶ》のあるおじいさんがありました。おじいさんの瘤《こぶ》のいつの間《ま》にか無《な》くなったのを見《み》て、ふしぎそうに、
「おじいさん、おじいさん、あなたの瘤《こぶ》はどこへいきました。だれか上手《じょうず》なお医者《いしゃ》さまに切《き》ってもらったのですか。どこだかそのお医者《いしゃ》さまのうちを教《おし》えて下《くだ》さい。わたしも行《い》って取《と》ってもらいましょう。」
とうらやましそうにたずねました。
おじいさんは、
「なあに、これはお医者《いしゃ》さまに切《き》ってもらったのではありません。ゆうべ山の中で鬼《おに》が取《と》っていったのです。」
といいました。
するとお隣《となり》のおじいさんはひざを乗《の》り出《だ》して、
「それはいったいどういうわけです。」
と、びっくりした顔《かお》をしました。
そこでおじいさんは、こういうわけで踊《おど》りを踊《おど》ったら、後《あと》でしち[#「しち」に傍点]に取《と》られたのだといって、くわしい話《はなし》をしました。お隣《となり》のおじいさんは、
「いいことを聞
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