玉《たま》の穴《あな》に絹糸《きぬいと》を通《とお》す者《もの》があったら、たくさんの褒美《ほうび》をやると告《つ》げ知《し》らせました。これでまた国中《くにじゅう》のさわぎになりました。けれどやはりだれにも変《か》わった智恵《ちえ》の持《も》ち合《あ》わせはありませんでした。
 すると、こんどもお百姓《ひゃくしょう》は穴倉《あなぐら》へ行って、おかあさんに相談《そうだん》をかけました。おかあさんは笑《わら》って、
「何《なん》でもないことだよ。それは、玉《たま》の片《かた》かたの穴《あな》のまわりにたくさん蜂蜜《はちみつ》をぬっておいて、絹糸《きぬいと》に蟻《あり》を一|匹《ぴき》ゆわいつけて、別《べつ》の穴《あな》から入《い》れてやるのです。すると蟻《あり》は蜜《みつ》の香《かお》りを慕《した》って、曲《ま》がりくねった穴《あな》の道《みち》を通《とお》って、先《さき》へ先《さき》へと進《すす》んでいくから、それについて糸《いと》もこちらの穴《あな》から向《む》こうの穴《あな》までつき抜《ぬ》けてしまうようになるのだよ。」
 といい聞《き》かせました。
 お百姓《ひゃくしょう》はそ
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