う聞《き》くと小踊《こおど》りをして、さっそく殿様《とのさま》の御殿《ごてん》へ行って、首尾《しゅび》よく玉《たま》の中へ絹糸《きぬいと》を通《とお》してお目にかけました。
 殿様《とのさま》はびっくりして、こんどもお百姓《ひゃくしょう》にたくさん、御褒美《ごほうび》のお金《かね》を下《くだ》さいました。
 お隣《となり》のお使《つか》いは絹糸《きぬいと》のりっぱに通《とお》った玉《たま》を返《かえ》してもらって、へいこうして逃《に》げていきました。その使《つか》いが帰《かえ》って来《く》ると、お隣《となり》の国《くに》の殿様《とのさま》も首《くび》をかしげて、
「信濃国《しなののくに》にはなかなか知恵者《ちえしゃ》があるな。これはうっかり攻《せ》められないぞ。」
 と考《かんが》えていました。
 こちらでも、さすがにこれで敵《てき》もあきらめて、もう来《こ》ないだろうと思《おも》っていました。

     四

 ところがしばらくすると、またお隣《となり》の国《くに》の殿様《とのさま》から、信濃国《しなののくに》へお使《つか》いが手紙《てがみ》を持《も》って来《き》ました。手紙《てが
前へ 次へ
全17ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング