なわ》を出《だ》して渡《わた》されたので、お隣《となり》の国《くに》の使《つか》いはへいこうして逃《に》げて行きました。

     三

 しばらくすると、またお隣《となり》の国《くに》の殿様《とのさま》から、信濃国《しなののくに》へお使《つか》いが一つの玉《たま》を持《も》って来《き》ました。いっしょにそえた手紙《てがみ》を読《よ》むと、この玉《たま》に絹糸《きぬいと》を通《とお》してもらいたい。それが出来《でき》なければ、信濃国《しなののくに》を攻《せ》めほろぼしてしまうと書《か》いてありました。
 殿様《とのさま》はそこで、その玉《たま》を手に取《と》ってよくごらんになりますと、玉《たま》の中にごく小《ちい》さな穴《あな》が曲《ま》がりくねってついていて、どうしたって糸《いと》の通《とお》るはずがありませんでした。殿様《とのさま》は困《こま》って、また家来《けらい》たちに御相談《ごそうだん》なさいましたが、家来《けらい》たちの中にもだれ一人《ひとり》、この難題《なんだい》をとく者《もの》はありませんでした。そこでまた国中《くにじゅう》へおふれを出《だ》して、曲《ま》がりくねった
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