くに》の殿様《とのさま》に手紙《てがみ》が来《き》ました。あけてみると、
「灰《はい》の縄《なわ》をこしらえて見《み》せてもらいたい。それが出来《でき》なければ、信濃国《しなののくに》を攻《せ》めほろぼしてしまう。」
 と書《か》いてありました。その国《くに》は大《たい》そう強《つよ》くって、戦争《せんそう》をしてもとても勝《か》つ見込《みこ》みがありませんでした。殿様《とのさま》は困《こま》っておしまいになって、家来《けらい》たちを集《あつ》めて御相談《ごそうだん》なさいました。けれどだれ一人《ひとり》灰《はい》の縄《なわ》なんぞをこしらえることを知《し》っている者《もの》はありませんでした。そこでこんどは国中《くにじゅう》におふれを出《だ》して、
「灰《はい》の縄《なわ》をこしらえてさし出《だ》したものには、たくさんの褒美《ほうび》をやる。」
 と、告《つ》げ知《し》らせました。
 すると、何《なに》しろ灰《はい》の縄《なわ》が出来《でき》なければ、今《いま》にもこの国《くに》は攻《せ》められて、ほろぼされてしまうというので、国中《くにじゅう》のお百姓《ひゃくしょう》は寄《よ》ると
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