やるぞ。」
とおっしゃいました。お百姓《ひゃくしょう》はこんどこそ、おかあさんの命《いのち》ごいをしなければならないと思《おも》って、
「わたくしはお金《かね》も品物《しなもの》もいりません。」
といいますと、殿様《とのさま》は妙《みょう》な顔《かお》をなさいました。お百姓《ひゃくしょう》はすかさず、
「その代《か》わりどうか母《はは》の命《いのち》をお助《たす》け下《くだ》さい。」
といって、これまでのことを残《のこ》らず申《もう》し上《あ》げました。殿様《とのさま》はいちいちびっくりして、目を丸《まる》くして聞《き》いておいでになりました。そして灰《はい》の縄《なわ》も、玉《たま》に糸《いと》を通《とお》すことも、それから二|匹《ひき》の牝馬《めうま》の親子《おやこ》を見分《みわ》けたことも、みんな年寄《としより》の智恵《ちえ》で出来《でき》たことが分《わ》かると、殿様《とのさま》は今更《いまさら》のように感心《かんしん》なさいました。
「なるほど年寄《としより》というものもばかにならないものだ。こんど度々《たびたび》の難題《なんだい》をのがれたのも、年寄《としより》のお陰《
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