》えました。
 お百姓《ひゃくしょう》は感心《かんしん》して、さっそく殿様《とのさま》の御殿《ごてん》へ行って、
「ではわたくしに見分《みわ》けさせて下《くだ》さいまし。」
 といって、おかあさんに教《おそ》わったとおり、二|匹《ひき》の馬《うま》の間《あいだ》に青草《あおくさ》を投《な》げてやりますと、案《あん》の定《じょう》、一|匹《ぴき》ががつがつして草《くさ》を食《た》べる間《あいだ》、もう一|匹《ぴき》は静《しず》かに座《すわ》ったままながめていました。それで親子《おやこ》が分《わ》かったので、殿様《とのさま》はそれぞれに札《ふだ》をつけさせて、
「さあ、これで間違《まちが》いはないでしょう。」
 といって、使《つか》いにつきつけますと、使《つか》いは、
「どうも驚《おどろ》きました。そのとおりです。」
 といって、へいこうして逃《に》げていきました。
 殿様《とのさま》はこれでまったく、お百姓《ひゃくしょう》の智恵《ちえ》に心《こころ》から驚《おどろ》いてしまいました。
「お前《まえ》は国中《くにじゅう》一ばんの智恵者《ちえしゃ》だ。さあ、何《なん》でも望《のぞ》みのものを
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