です。
「ぼくにしてみれば、なにをどうこたえるのもおなじです。」と、ヨハンネスはいいました。「たぶんあなたが夢でごらんになったとおりでしょう。それはいつだって、やさしい神さまが、守っていてくださるとおもって、安心しているのですからね。けれど、おわかれのごあいさつだけはしておきましょうよ。答をまちがえれば、もう、二どとおめにかかれないんですから。」
 そこで、ふたりはせっぷんしあいました。やがて、ヨハンネスは、町へでて、お城にはいって行きました。大広間には、もういっぱい人があつまっていました。審判官《しんぱんかん》はよりかかりのあるいすに、からだをうずめて、ふんわりと鳥のわた毛を入れたまくらを、あたまにかっていました。なにしろこのひとたちは、たくさんにものをかんがえなくてはならないのでしてね。そのとき、お年よりの王さまは立ち上がって、白いハンカチを目におあてになりました。するうち、お姫さまがはいって来ました。きのうみたよりまた一だん立ちまさってうつくしく、一同にむかって、にこやかにあいさつしました。でも、ヨハンネスには、わざわざ手をさしのべて、「あら、おはようございます。」といいました。
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