おはいり。」ヨハンネスが戸をたたくと、なかで、お年よりの王さまがおこたえになりました。――ヨハンネスがあけてはいると、ゆったりした朝着のすがたに、縫いとりした上ぐつをはいた王さまが、出ておいでになりました。王冠をあたまにのせて、王しゃくを片手にもって、王さまのしるしの地球儀の珠《たま》を、もうひとつの手にのせていました。
[#挿絵(fig42382_02.png)入る]
「ちょっとお待ちよ。」と、王さまはいって、ヨハンネスに手をおだしになるために、珠を小わきにおかかえになりました。ところが、結婚申込に来た客だとわかると、王さまはさっそく泣きだして、しゃくも珠も、ゆかの上にころがしたなり、朝着のそでで、涙をおふきになるしまつでした。おきのどくな老王さま。
「それは、およし。」と、王さまはおっしゃいました。「「ほかの[#「ほかの」は底本では「ほのか」]もの同様、いいことはないよ。では、おまえにみせるものがある。」
そこで、王さまは、ヨハンネスを、王女の遊園《ゆうえん》につれていきました。なるほどすごい有様です。どの木にもどの木にも、三人、四人と、よその国の王さまのむすこたちが、ころされて
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