垣へ、ながいつり橋や御殿を網で張りわたすことになりました。さて、そのうえにきれいな露がおちると、あかるいお月さまの光のなかでガラスのようにきらきらしました。こんなことがそれからそれとつづいているうち、お日さまがおのぼりになりました。すると、妖女たちは、花のつぼみのなかにはい込みました。朝の風が、つり橋やお城をつかむと、それなり大きなくもの網になって、空の上にとびました。
さて、ヨハンネスがいよいよ森を出ぬけようとしたとき、しっかりした男の声で、うしろからよびとめるものがありました。
「もしもし、ご同行《どうぎょう》、どこまで旅をしなさる。」
「あてもなくひろい世間へ。」と、ヨハンネスはいいました。「父親もなし、母親もなし、たよりのないわかものです。でも神さまは、きっと守ってくださるでしょう。」
「わたしも、あてもなく世間へでていくところだ。」と、その知らないひとはいいました。「ひとつ、ふたりでなかまになりましょうか。」
「ええ、そうしましょう。」と、ヨハンネスもいいました。そこで、ふたりは、いっしょに出かけました。じき、ふたりは仲よしになりました。なぜといって、ふたりともいい人たちだ
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