しゃなりしゃなり出て来ました。でも正しくもののみえる目でみますと、すぐとばけの皮があらわれました。それはほうきの柄にキャベツのがん首をすげたばけもので、それが縫いとりした衣裳《いしょう》を着せてもらって、魔法つかいの魔法で、息を吹き込んでもらって、動いているだけでした。どのみち、こけおどかしにしていたことで、なにがどうだってかまったことはありません。
しばらくダンスがあったあとで、王女は魔法つかいに、あたらしく、結婚の申し込み手の来たことを話しました。それで、あしたの朝お城へやってくるが、相手をためすには、なにを心におもっていることにしようか、相談をかけました。
「よろしい、おききなさいよ。」と、魔法つかいはいいました。「まあ、なんでもごくたやすいことをかんがえるのさ。すると、かえって、わからないものだ。そう、じぶんのくつ[#「くつ」に傍点]のことでもかんがえるのだなあ。それならまずあたるまい。それで首をきらせてしまう。ところで、あすの晩くるとき、その男の目だまをもってくることを、わすれないようにな。久しぶりでたべたいから。」
王女は、ていねいにあたまをさげて、目だまはわすれずにもって来ますといいました。魔法つかいが山をあけてやりますと、王女はお城へとんでかえりました。でも、旅なかまはどこまでもあとについていって、したたかむちでぶちました。王女は、あられがひどい、ひどいとこぼし、こぼし、一生けんめいにげて、やっと寝べやの窓から、なかへはいりました。旅なかまも、それなり宿のほうへとんでかえっていきますと、ヨハンネスは、まだねむったままでしたから、そっとつばさをぬいで、じぶんも床にはいりました。なにしろ、ずいぶんつかれていたでしょうからね。
さて、あくる日まだくらいうちから、ヨハンネスは目をさましました。旅なかまもいっしょに起きて、じつにゆうべはふしぎで、お姫さまと、それからお姫さまのくつの夢をみたという話をして、だから、ためしに、お姫さま、あなたはごじぶんのくつ[#「くつ」に傍点]ことをおもって、それをきこうとなさるのでしょうといってごらん、といいました、これは、山で魔法つかいのいったことばを、そっくりきいていっているだけなのですが、そんなことはおくびにもださず、ただ、王女がじぶんのくつ[#「くつ」に傍点]のことをかんがえていやしないか、きいてみよとだけいったの
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