です。
「ぼくにしてみれば、なにをどうこたえるのもおなじです。」と、ヨハンネスはいいました。「たぶんあなたが夢でごらんになったとおりでしょう。それはいつだって、やさしい神さまが、守っていてくださるとおもって、安心しているのですからね。けれど、おわかれのごあいさつだけはしておきましょうよ。答をまちがえれば、もう、二どとおめにかかれないんですから。」
そこで、ふたりはせっぷんしあいました。やがて、ヨハンネスは、町へでて、お城にはいって行きました。大広間には、もういっぱい人があつまっていました。審判官《しんぱんかん》はよりかかりのあるいすに、からだをうずめて、ふんわりと鳥のわた毛を入れたまくらを、あたまにかっていました。なにしろこのひとたちは、たくさんにものをかんがえなくてはならないのでしてね。そのとき、お年よりの王さまは立ち上がって、白いハンカチを目におあてになりました。するうち、お姫さまがはいって来ました。きのうみたよりまた一だん立ちまさってうつくしく、一同にむかって、にこやかにあいさつしました。でも、ヨハンネスには、わざわざ手をさしのべて、「あら、おはようございます。」といいました。
さて、ヨハンネスがいよいよ、お姫さまのかんがえていることをあてるだんになりました。まあ、そのとき、お姫さまは、なんという人なつこい目で、ヨハンネスをみたことでしょう。ところが、ヨハンネスの口から、ただひとこと「くつ」とでたとき、お姫さまの顔はさっとかわって、白墨《はくぼく》ように白くなりました。そうして、からだじゅう、がたがたふるえていました。けれどもう、どうにもなりません。みごと、ヨハンネスはいいあてたのですもの。
ほほう、ほほう。お年よりの王さまは、どんなにうれしかったでしょう。あんまりうれしいので、みごとなとんぼをひとつ、王さまはきっておみせになりました。すると、みんなもうれしがって手をたたいて、王さまと、それから、はじめてみごとにいいあてたヨハンネスを、はやし立てました。
旅なかまも、まずうまくいったときいて、ほっとしました。ヨハンネスは、でも、手をあわせて、神さまにお礼をいいました。そして、神さまは、あとの二どもきっと守ってくださるにちがいないとおもいました。さて、あくる日もつづいてためされることになっていました。
その晩も、ゆうべのようにすぎました。ヨハンネスがね
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