ものいみが明《あ》けるまでは、だれにも見《み》せることができないというわけを、ていねいにいって断《ことわ》りました。するとおばさんは悲《かな》しそうな顔《かお》をして、
「まあ、よくよく縁《えん》がないのだね。なにしろ年《とし》を取《と》って生《お》い先《さき》の短《みじか》い体《からだ》だからね。しかたがない、あきらめましょう。」
 と、しおれ返《かえ》っていいました。
 その様子《ようす》をみると、綱《つな》はまたどうしても鬼《おに》の腕《うで》を出《だ》して見《み》せなければならないような気《き》になって、
「ではせっかくだから、ちょっとお目にかけましょう。」
 といって、箱《はこ》をおばさんの前《まえ》に持《も》ち出《だ》して、ふたをあけました。
「どれ、どれ。」
 とおばさんはいって、つとそばによりました。そしてしばらくじっと箱《はこ》の中をのぞき込《こ》みながら、
「まあ、これが鬼《おに》の腕《うで》かい。」
 といって、いきなり左《ひだり》の腕《うで》を伸《の》ばして、腕《うで》を取《と》りました。
 綱《つな》がはっと思《おも》う間《ま》に、おばさんはみるみる鬼《おに》
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