な毛《け》が一面《いちめん》にはえていました。
みんなは綱《つな》の武勇《ぶゆう》をほめて、また新《あたら》しくお酒《さけ》を飲《の》みはじめました。
二
「七日《なのか》の間《あいだ》腕《うで》を預《あず》けておくぞ。」
こういい残《のこ》した鬼《おに》の言葉《ことば》を綱《つな》は忘《わす》れずにいました。それで万一《まんいち》取《と》り返《かえ》されない用心《ようじん》に、綱《つな》は腕《うで》を丈夫《じょうぶ》な箱《はこ》の中に入《い》れて、門《もん》の外《そと》に、
「ものいみ」
と書《か》いて張《は》り出《だ》して、ぴったり門《もん》を閉《し》めて、お経《きょう》をよんでいました。
六日《むいか》の間《あいだ》は何事《なにごと》もありませんでした。七日《なのか》めの夕方《ゆうがた》にことことと門《もん》をたたくものがありました。綱《つな》の家来《けらい》が門《もん》のすきまからのぞいてみますと、白髪《しらが》のおばあさんが、杖《つえ》をついて、笠《かさ》をもって、門《もん》の外《そと》に立《た》っていました。家来《けらい》が、
「あなたはどなたです。」
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