かけました。そうして餓鬼《がき》のように、死がいのまわりにあつまって、肉をちぎってたべました。エリーザはそのすぐそばをとおっていかなければなりません。すると女鬼どもは、おそろしい目でにらみつけました。けれども心のなかでお祈しながら、エリーザは燃えるイラクサをあつめて、それをもってお城へかえりました。
このときただひとり、エリーザをみていたものがありました。それはれいの大僧正《だいそうじょう》でした。この坊さんは、ほかのひとたちのねむっているときに、ひとり目をさましているのです。そこで今夜のことをみとどけたうえは、いよいよじぶんのかんがえが正しかったとおもいました。こんなことはお妃《きさき》たるもののすべきことではない。女はたしかに魔女だったのだ。だからああして王さまと人民を迷わしたのだと、かんがえました。
お寺の懺悔座《ざんげざ》で、大僧正は王さまに、じぶんの見たことと、おもっていることとを話しました。ひどいのろいのことばが、大僧正の口からはきだされると、[#「、」は底本では「。」]お寺のなかの昔のお上人《しょうにん》たちの像が首をふりました。それがもし口をきいたら、「そうではない
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