ぞ、エリーザに罪はないのだぞ。」と、いいたいところでしたろう。けれども大僧正はそれを、まるでちがったいみにとりました。――あべこべに、それこそエリーザに罪のあるしょうこで、その罪をにくめばこそ、あのとおり首をふっているのだとおもいました。そのとき、ふた粒まで大粒の涙が、王さまのほおをこぼれ落ちました。王さまは、はじめて、うたがいの心をもってお城にかえりました。どうして落ちついてねむるどころではありません。はたしてエリーザがそっと起きあがるところをみつけました。それからは毎晩、おなじことをしました。そのたびにそっと、あとをつけていって、エリーザがれいのほら穴のへやに姿をかくしてしまうところをみとどけました。
日一日と、王さまの顔はくらく、くらくなりました。エリーザはそれをみつけて、それがなぜかわけはわかりませんが、心配でなりませんでした。そのうえ、[#「、」は底本では「。」]きょうだいたちのことを心のなかでおもって苦しんでいました。エリーザのあつい涙は、お妃の着るびろうどと紫絹《むらさきぎぬ》の服のうえにながれて、ダイヤモンドのようにかがやいてみえました。そのりっぱなよそおいをみるもの
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