ぬけ出して、あのほら穴のようにかざりつけた小べやにはいって、くさりかたびらを、一枚一枚編みました。けれどいよいよ七枚めにかかったとき、麻糸がつきてしまいました。
エリーザは、お寺の墓地へいけば、イラクサの生《は》えていることを知っていました。けれどそれには、じぶんでいってつんでこなければならないのです。どうしてそこまででていきましょう。
「ああ、わたしの心にいだく苦しみにくらべては、指の痛みぐらいなんだろう。」と、エリーザはおもいました。「わたしはどうしたってそれをしなければならない。そうすれば神さまのおたすけがきっとあるにちがいない。」
それこそまるでなにか悪事でもくわだてているように、胸をふるわせながら、エリーザは月夜の晩、そっとお庭へぬけだして、長い並木道《なみきみち》をとおって、さびしい通をいくつかぬけて、お寺の墓地へでていきました。すると、そこのいちばん大きな墓石の上に、血を吸う女鬼のむれがすわっているのをみつけました。このいやらしい魔物どもは、水でもあびるしたくのように、ぼろぼろの着物をぬいでいました。やがて骨ばった指で、あたらしいお墓にながいつめ[#「つめ」に傍点]を
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