くずれてしまって、そのかわりに、こんどは、どれもおなじようなりっぱなお寺が、二十も高い塔やとがった窓をならべていました。なんだかそこからオルガンがひびいてくるような気がしましたが、でもそれは海鳴りの音をききちがえたものでした。やがてお寺のすぐそばまでいきますと、みるみるそれは艦隊になって、海をわたっていきました。でもよくながめると、それもただ海の上を霧がはっているだけでした。そんなふうに、しじゅう目のまえにかわったまぼろしを見ながらとんでいくうちに、とうとう目ざすほんものの国をみつけました。そこには、うつくしい青い山がそびえて、すぎ林が茂って、町もあり、お城もありました。お日さまがまだ高いうちに、大きなほら穴のまえの岩のうえにおりました。そこにはやわらかなみどり色のつる草が、縫いとりした壁かけのようにうつくしくからんでいました。
「さあ、ここで、今夜はおまえもどんな夢をみるだろうね。」と、末のおにいさまがいって、いもうとのねべやをみせてくれました。
「どうか、神さまが夢で、どうしたらおにいさまたちをすくって、もとの姿にかえしてあげられるかおしえてくださるといいのですわ――。」と、いもう
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