ーザは花たばにしてあつめました。その羽根の上には、水のしずくがたれていました。それは露の玉か、涙のしずくかわかりません。浜の上はいかにもさびしいものでした。けれど大海のけしきが、いっときもおなじようでなく、しじゅうそれからそれとかわるので、さほどさびしいともかんじませんでした。それは二三時間のあいだに、おだやかな陸にかこまれた内海が一年かかってするよりも、もっとたくさんの変化をみせました。するうち、まっくろな大きな雲がでて来ました。海も「おれだってむずかしい顔をするぞ。」というようにおもわれました。やがて風が吹きだして、波が白い横腹をうえに向けました。でも雲がまっ赤にかがやきだして、風がぴったりとまると、海はばら[#「ばら」に傍点]の花びらのようにみえました。それからまた青くなったり白くなったりしました。でもいかほど海がおだやかにないでも、やはり浜辺にはいつもさざなみがゆれていました。海の水はねむっているこどもの胸のように、やさしくふくれあがりました。
 お日さまがちょうどしずもうとしたとき、十一羽の野のはくちょうが、めいめいあたまに金のかんむりをのせて、おかのほうへとんでくるところを
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