なるようにおもいました。そうして、そのおつむりのへんに、またはお腕のあいだから、かわいらしい天使がのぞいているようにおもわれました。
 朝になっても、ほんとうに朝になったのか、夢をみているのか、わかりませんでした。エリーザはふた足三足いきますと、むこうからひとりのおばあさんが、かごのなかに木いちごを入れてもってくるのにであいました。
 おばあさんは木いちごをふたつ三つだしてくれました。エリーザはおばあさんに、十一人の王子が馬にのって、森のなかを通っていかなかったかとたずねました。
「いいえ。」と、おばあさんがこたえました。「だが、きのう、あたしは十一羽のはくちょうが、めいめいあたまに金のかんむりをのせて、すぐそばの川でおよいでいるところをみましたよ。」
 そこで、おばあさんはエリーザをつれて、すこしさきの坂になったところまで案内しました。その坂の下にちいさな川がうねってながれていました。その川のふちには、木立《こだち》が長い葉のしげった枝と枝とをおたがいにさしかわしていました。しぜんのままにのびただけでは、葉がまざり合うまでになれないところには、木の根が、地のなかから裂けてでて、枝とを
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