いました。ほんとうに神さまは、そこへ野生のりんごの木をならせて、空腹をしのがせてくださいました。神さまはエリーザに、なかでもいっぱいなったりんご[#「りんご」は底本では「りりんご」]の実のおもみで、しなっている木をおみせになりました。そこでエリーザはたっぷりおひるをすませて、りんごのしなった枝につっかい棒をかってやりました。それからまた、森のいちばん暗い奥の奥にはいっていきました。それはじつにしずかで、あるいて行くじぶんの足音もきこえるくらいでしたし、足の下で枯れッ葉のかさこそくずれる音もきこえました。一羽の鳥の姿もみえませんでした。ひとすじの日の光も暗い木立のなかからさしこんでは来ませんでした。高い樹の幹が押しあってならんでいて、まえをみると、まるで垣根がいくえにも結ばれているような気がしました。ああ、これこそうまれてまだ知らなかったさびしさでした。
すっかりくらい夜になりました。もう一ぴきのほたるも草のなかに光ってはいませんでした。わびしいおもいでエリーザは横になって眠りました。すると、木木の枝があたまの上で分かれて、そのあいだから、やさしい神さまの目が、空のうえからみておいでに
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