交じってお行きになりました。すると新羅《しらぎ》の使者《ししゃ》の中に日羅《にちら》という貴《とうと》い坊《ぼう》さんがおりましたが、きたない童《わらべ》たちの中に太子《たいし》のおいでになるのを目ざとく見付《みつ》けて、
「神《かみ》の子がおいでになる。」
 といって、太子《たいし》に近《ちか》づこうといたしました。太子《たいし》はびっくりして逃《に》げて行こうとなさいました。日羅《にちら》はあわてて履《くつ》もはかず駆《か》け出《だ》してお後《あと》を追《お》いかけました。そして太子《たいし》の前《まえ》の地《じ》びたにぺったりひざをついたままうやうやしく、
「敬礼救世《きょうらいぐぜ》観世音菩薩《かんぜおんぼさつ》。妙教流通《みょうきょうるづう》東方日本国《とうほうにっぽんこく》。」
 と申《もう》しますと、日羅《にちら》の体《からだ》から光明《こうみょう》がかっと射《さ》しました。そして太子《たいし》の額《ひたい》からは白《しろ》い光《ひかり》がきらりと射《さ》しました。日羅《にちら》の言《い》った言葉《ことば》は、人間《にんげん》の世《よ》の苦《くる》しみを救《すく》って下《
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