でも、そのおふれは、わざわざ出すまでもありませんでした。なぜというに、十五分とたたないうち、お城をとりまわしている園《その》の中に、たくさんの高い木やひくい木が、もっさりと茂《しげ》りだして、そのあいだには、いばらや草やぶが、びっしり鉄条網《てつじょうもう》のようにからみついてしまいましたから、人間もけだものも、それをくぐってはいることはできなかったからです。
 そういうわけで、しばらくすると、そとから見えるものは、お城の塔《とう》のてっぺんだけになりました。それも、よほど遠くにはなれてでなければ、見えないのです。これも、妖女のみごとな、はなれわざだったことがわかりました。こうして、王女は眠っているあいだ、たれひとりおもしろ半分、のぞきにくることもできないようになったのでございます。

         三

 さて、百年は夢《ゆめ》のようにすぎました。そのじぶん、その国をおさめていた新しい王様の王子が、ある日、眠る森の近くを通りかかりました。
 この王子は、眠っている王女の一|族《ぞく》が、とうに死にたえて、そのあとに代って来たべつの王家の王子で、その日はちょうど、そのへんに狩《か
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