でも、
とても及ばぬ やさしい調子《ちょうし》。

おやと見るうち 方方の子供、
かたかた、ぱたぱた 小さな足音。
おしゃべりするやら 手をたたくやら、
元気なこえで 大高《おおたか》わらい、
笛にうかれて とんで出たとんで出た。

出てくる出てくる あれあれごらん、
黄金《きん》のかみの毛 まっ赤《か》なほぺた、
水晶《すいしょう》のまなこ しんじゅの白歯《しらは》、
かわいざかりの 男と女、
町の子どもは 皆あつまった。

男はさっさと あるいて行くし、
笛はますます 高音《たかね》にひびく、
子どもはぞろぞろ あとを追う。
けれどあぶない やれあぶないぞ、
みすみす目の前の 大《だい》ウェーゼル河。

市長も議員も おうしのように、
だんまりんぼと ただはらはら、
どうなることかと 見ているばかり。
ところで男は 河まで行くと、
ふと西むいて 河岸《かわぎし》づたい。

『だが[#「『だが」は底本では「だが」]むこうには 大山がある。
コッペルベルヒと いうその山は、
けわしい道の ことだから、
しょせん子どもに ついては行けぬ。』
まずまずこれでと ほっと息《いき》。

けれど
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