ふしぎや 子どもたち、
山のふもとに 行きついたとき、
さっとふたつに その山がわれ、
笛吹き男も おどり子たちも、
ずんずん中へ なだれこむ。
みんなの姿が かくれると、
われ目はとじて もとのまま。
びっこの子どもが ただ一人、
おくれてついて 行くうちに、
山がしまって 残された。
その子は町に かえったが、
いつもなんだか さびしそう。
どうしてそんなに 元気なく、
ふさいでいるかと たずねると、
子どもはいつも こういった。
『笛吹男の やくそくの
国へ行かれず 残された。
それがかなしい なさけない、
だってこの世で 見られない、
たのしい、たのしい 国だもの。
そこはきれいな 天国で
花はしぼまず 咲《さ》きつづき、
鳥はほがらに 歌うたう。
しかも年じゅう よい天気、
ぽかぽかとして 春のよう。』
あとにあわれな 町の人、
どうにか子どもを とりかえす、
工夫に脳《のう》みそ しぼったが、
影もかたちも 行方《ゆくえ》がしれず、
泣けどくやめど かいはない。
これはまったく 親たちが、
やくそく破った みせしめだ。
けれど子どもに 罪《つみ》はない、
だから
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