もの。
ねずみ退治《たいじ》が 成功したら、
五千円でも 今すぐあげる。』
市長も議員も いちどにいった。
そこで男は 四辻《よつじ》に出ると、
にっこり、まほうの笛、口にあて、
なれた手つきで 歌口《うたぐち》しらべ、
器用《きよう》にあけたり またふさいだり、
ピュウロ[#「ピュウロ」は底本では「ビュウロ」]、ピュウロと 高|音《ね》に鳴らす。
高音《たかね》に鳴らす 二度、また三度、
やがて大ぜい ひそひそばなし、
ひそひそばなしが ぶつぶつごえに、
ぶつぶつごえが がやがやさわぎ
どどっどどっと 大どよめきに。
おやおや、出た出た ねずみが出たぞ。
そこの床《ゆか》でも チュウチュウチュウ、
ここの軒でも チュウチュウチュウ、
がたがたばたばた よちよちころころ
笛にうかれて とんだりはねたり。
黒ねずみ赤ねずみ 灰いろねずみ、
ひょろひょろねずみに ぶくぶくねずみ
じじいねずみに 若い衆《しゅ》ねずみ、
親子きょうだい おじおばいとこ、
尻尾《しっぽ》ふりたて ひげくいそらす。
男はなおも 節《ふし》おもしろく、
街から街へと 吹きたてゆけば、
おくれちゃならぬと
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