いて、
やせてひょろひょろ 背高《せいたか》のっぽ。
顔はつるつる ひげなし男、
髪《かみ》はふさふさ どす黒い顔、
うす気味《きみ》わるいは ぎらぎら青い、
針《はり》によくにた その細い目《め》と、
いつも笑うよな その口もとだ。
『まるでこの世の 人ではないぞ、
墓《はか》の下から 出て来たようだ。』
一人の議員は こうつぶやいた。
男はかまわず ずかずかはいる、
つくえのそばまで もうやって来た。
『なんと皆さん まほうの笛で、
飛ぶ、はう、およぐ、ありとある
鳥けだものを 音《ね》にひきよせる、
ふしぎなまだらの 笛ふき男、
これがせっしゃの 名前でござる。』
それから男は いろいろ語る、
笛でたてたる 功名《こうみょう》ばなし。
なるほど黄いろと 赤まんだらの、
領布《ひれ》に下げたる まほうの笛を、
手先《てさき》でむずむず はや吹きたそう。
感心したよな 議員の顔を、
ながめた男は こうまんらしく、
『どうだね皆さん お困りものの
ねずみはわしが 退治《たいじ》てあげる。
かわりに千円 お礼はもらう。』
男のことばを 皆まできかず、
『なに千円だ そりゃ安い
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