はと》

 鳩《はと》もむかしは親不孝《おやふこう》で、親《おや》のいうことには、右《みぎ》といえば左《ひだり》、左《ひだり》といえば右《みぎ》と、何《なに》によらずさからうくせがありました。ですから、親鳩《おやばと》は子鳩《こばと》に山へ行ってもらいたいと思《おも》う時《とき》には、わざと今日《きょう》は畑《はたけ》へ出てくれといいました。畑《はたけ》へ下《お》りてもらいたいと思《おも》う時《とき》には、わざと、今日《きょう》は山へ行ってくれといいました。
 いよいよ親鳩《おやばと》が死《し》ぬとき、死《し》んだら山のお墓《はか》に埋《う》めてもらいたいと思《おも》って、その時《とき》もわざと、
「わたしが死《し》んだら、川の岸《きし》の小石《こいし》と砂《すな》の中に埋《う》めておくれ。」
 といい残《のこ》しました。
 親鳩《おやばと》に別《わか》れると、子鳩《こばと》は急《きゅう》に悲《かな》しくなりました。そしてこんどこそは親《おや》のいいつけにそむくまいと思《おも》って、そのとおり河原《かわら》の小石《こいし》と砂《すな》の中に、親《おや》のなきがらを埋《う》めて、小さなお
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