《からだ》から羽《はね》が生《は》えて、鳥《とり》になって、
「がんくう。がんくう。」
 と鳴《な》いて、飛《と》んで行きました。
「がんこ」というのはお芋《いも》のしっぽということです。弟《おとうと》は「お芋《いも》のしっぽをたべている。」ということを、「がんくう。がんくう。」といって、鳴《な》いたのでした。
 すると兄《あに》はいよいよ弟《おとうと》がかわいそうになって、これも鳥《とり》になって、
「ほっちょかけたか、おっととこいし。」
 と、鳴《な》き鳴《な》き弟《おとうと》のあとを追《お》って飛《と》んで行きました。
 毎年《まいねん》うの花《はな》の咲《さ》くころになると、暗《くら》い空《そら》の中で、しぼるような悲《かな》しい声《こえ》で鳴《な》いて飛《と》びまわっているほととぎすは、人によって「がんくう。がんくう。」と鳴《な》いているようにも聞《き》こえますし、「ほっちょかけたか、おっととこいし。」と鳴《な》いているようにも聞《き》こえます。これは鳥《とり》になったきょうだいが、やみ夜《よ》の中で、いつまでも呼《よ》び合《あ》っているのだということです。

     鳩《
前へ 次へ
全33ページ中31ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング