っ黒《くろ》な手足《てあし》をしていますから、けっしてだまされてはいけませんよ。」
 といい聞《き》かせました。すると子供《こども》たちは、
「おかあさん、心配《しんぱい》しないでもいいよ。おかあさんのいうとおりにして待《ま》っているからね。」
 といったので、おかあさんは安心《あんしん》して出て行きました。
 ところがじき帰《かえ》って来《く》るといったおかあさんは、なかなか帰《かえ》って来《こ》ないで、そろそろ日が暮《く》れかけてきました。子供《こども》たちはだんだん心配《しんぱい》になってきました。「おかあさんはどうしたんだろうね。」とみんなでいい合《あ》っていますと、だれかおもての戸《と》をとんとんとたたいて、
「子供《こども》たちや、あけておくれ。おかあさんだよ。お前《まえ》たちのすきなおみやげを、たんと買《か》って来《き》たからね。」
 といいました。
 けれども子供《こども》たちは、しゃがれたがあがあ声《ごえ》をしているから、おかあさんではない。山姥《やまうば》が化《ば》けて来《き》たにちがいないと思《おも》って、
「あけない、あけない、お前《まえ》はおかあさんじゃあない
前へ 次へ
全33ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング