思《おも》いをしたあとでは、さてなかなかその決心《けっしん》もつきませんでした。
 そこでいちばんおしまいに、中でもふんべつのありそうな頭《あたま》の白いねずみが立《た》ち上《あ》がりました。そして落《お》ちついた調子《ちょうし》で、
「まあ何《なに》かというよりも、もう一|度《ど》人間《にんげん》に頼《たの》んで、猫《ねこ》をつないでもらうことにしたらいいだろう。」
 と言《い》いました。
 するとみんなが声《こえ》を合《あ》わせて、
「そうだ。そうだ。それに限《かぎ》る。」
 と言《い》いました。
 そこで議長《ぎちょう》のごま塩《しお》ねずみが仲間《なかま》からえらばれて、ここのお寺《てら》の和尚《おしょう》さんの所《ところ》へ行って、もう一|度《ど》猫《ねこ》に綱《つな》をつけてもらうように頼《たの》みに行く役《やく》を引《ひ》き受《う》けることになりました。ごま塩《しお》ねずみはさっそく本堂《ほんどう》へ上《あ》がって、和尚《おしょう》さんのお居間《いま》までそっとしのんでいって、
「和尚《おしょう》さま、和尚《おしょう》さま、お願《ねが》いでございます。」
 と言《い》いま
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