尽《つ》きてしまうことになるのです。いったいどうしたらいいでしょう。」
すると元気《げんき》のよさそうな一ぴきの若《わか》いねずみが立《た》ち上《あ》がって、
「かまわないから、猫《ねこ》の寝《ね》ているすきをねらって、いきなりのど笛《ぶえ》に食《く》いついてやりましょう。」
と言《い》いました。
みんなは「さんせいだ。」というような顔《かお》をしましたが、さてだれ一人《ひとり》進《すす》んで猫《ねこ》に向《む》かっていこうというものはありませんでした。
するとまた一ぴき背中《せなか》のまがったねずみがぶしょうらしく座《すわ》ったまま、のろのろした声《こえ》で、
「そんなことを言《い》っても猫《ねこ》にはかなわないよ。それよりかあきらめて、田舎《いなか》へ行《い》って野《の》ねずみになって、気楽《きらく》に暮《く》らしたほうがましだ。」
と言《い》いました。
なるほど田舎《いなか》へ行《い》って野《の》ねずみになって、木の根《ね》やきび殻《がら》をかじって暮《く》らすのは気楽《きらく》にちがいありませんが、これまでさんざん都《みやこ》でおいしいものを食《た》べて、おもしろい
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