見《み》るのがかわいそうだ。だからお前《まえ》たちもこれから心《こころ》を入《い》れかえて分相応《ぶんそうおう》に、人《ひと》の捨《す》てた食《た》べ物《もの》の残《のこ》りや、俵《たわら》からこぼれたお米《こめ》や豆《まめ》を拾《ひろ》って、命《いのち》をつなぐことにしてはどうだ。そして人のめいわくになるような悪《わる》いいたずらをきれいにやめれば、わたしは猫《ねこ》にそういって、もうこれからお前《まえ》たちをとらないようにしてやろう。」
 こういうとねずみたちは喜《よろこ》んで、
「もう決《けっ》して悪《わる》いことはいたしませんから、猫《ねこ》にわたくしどもをとらないようにおっしゃって下《くだ》さいまし。」
 と言《い》いました。
「よしよし、その代《か》わりお前《まえ》たちがまた悪《わる》さをはじめたら、すぐに猫《ねこ》に言《い》ってとらせるが、いいか。」
 と和尚《おしょう》さんが念《ねん》を押《お》しますと、
「ええ、ええ。よろしゅうございますとも。」
 と、ねずみたちはきっぱりと答《こた》えました。
 そこで和尚《おしょう》さんはふり返《かえ》って、こんどは猫《ねこ》に向
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