》やのら猫《ねこ》まで、これも一門《いちもん》残《のこ》らず牙《きば》をとぎそろえて向《む》かっていきました。
両方《りょうほう》西《にし》と東《ひがし》に分《わ》かれてにらみ合《あ》って、今《いま》にも飛《と》びかかろう、食《く》いかかろうと、すきをねらっているところへ、ひょっこりお寺《てら》の和尚《おしょう》さんが、話《はなし》を聞《き》いて仲裁《ちゅうさい》にやって来《き》ました。和尚《おしょう》さんは猫《ねこ》の陣《じん》とねずみの陣《じん》のまん中《なか》につっ立《た》って、両手《りょうて》をひろげて、
「まあ、まあ、待《ま》て。」
と言《い》いますと、猛《たけ》りきっていた猫《ねこ》の軍《ぐん》もねずみの軍《ぐん》も、おとなしくなって、和尚《おしょう》さんの顔《かお》を見《み》ました。
和尚《おしょう》さんはまずねずみの軍《ぐん》に向《む》かって、
「これ、これ、お前《まえ》たちがいくら死《し》にもの狂《ぐる》いになったところで、猫《ねこ》にかなうものではない。一ぴき残《のこ》らず食《く》い殺《ころ》されて、この野原《のはら》の土《つち》になってしまう。わたしはそれを
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