《おお》ぜい集《あつ》まって相談《そうだん》をはじめました。
その時《とき》まず、その中で年《とし》を取《と》った白猫《しろねこ》が一段《いちだん》高《たか》い石《いし》の上に立《た》ち上《あ》がって、
「みなさん、聞《き》くところによりますと、こんどわたしたちが放《はな》し飼《が》いになったについて、ねずみどもがたいそう困《こま》って、昨晩《さくばん》お寺《てら》の和尚《おしょう》さんの所《ところ》へ行って、もう一|度《ど》わたしたちをつないでくれるように頼《たの》んだということであります。これはじつにけしからん話《はなし》で、ぜんたいねずみは猫《ねこ》の食《く》い物《もの》と大昔《おおむかし》から神《かみ》さまがおきめになったのです。その上ねずみはあのとおり悪《わる》さをして、人間《にんげん》にめいわくをかける悪《わる》いやつです。万一《まんいち》ねずみめのいうことが取《と》り上《あ》げられて、せっかく自由《じゆう》になったわれわれが、またもとの窮屈《きゅうくつ》な身分《みぶん》に追《お》い込《こ》まれるようなことがあってはたいへんです。さっそく和尚《おしょう》さんの所《ところ》へ行《い》って、あくまでそんなことのないようにしてもらわなければなりません。」
こう言《い》うとみんなは声《こえ》をそろえて、
「賛成《さんせい》、賛成《さんせい》。さあ、ではすぐ白《しろ》のおじいさんに、行《い》ってもらうことにしましょう。」
と言《い》いました。そこで白《しろ》は一同《いちどう》の代《か》わりになって、和尚《おしょう》さんの所《ところ》へ出《で》かけていきました。
「和尚《おしょう》さま、聞《き》きますとゆうべねずみがこちらへ上《あ》がって、わたくしどもの悪口《わるくち》を申《もう》したそうですね。どうもけしからん話《はなし》でございます。ねずみというやつは、人間《にんげん》の中で申《もう》せばどろぼうにあたるやつで、じひをおかけになればなるほどよけい悪《わる》いことをいたします。もしねずみの言《い》うことをお取《と》り上《あ》げになって、わたくしどもがまたつながれるようなことになりますと、いよいよやつらは図《ず》に乗《の》って、どんなひどいいたずらをするかわかりません。それとは違《ちが》って、猫《ねこ》はもと天竺《てんじく》の虎《とら》の子孫《しそん》でござい
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