、あの時《とき》の小さな坊《ぼう》さんと大《おお》きなひげ男《おとこ》でした。そこで話《はなし》のついでに、田村麻呂《たむらまろ》はお寺《てら》の和尚《おしょう》さんに向《む》かって、奥州《おうしゅう》の戦《いくさ》ではこれこれこういうことがあったと話《はな》しますと、和尚《おしょう》さんは横手《よこで》を打《う》って、
「ははあ、それでわかりました。するとその小坊主《こぼうず》というのは勝軍地蔵《しょうぐんじぞう》さまで、大《おお》きなひげ男《おとこ》と見《み》えたのは勝敵毘沙門天《しょうてきびしゃもんてん》に違《ちが》いありません。どちらもこの御堂《おどう》にお鎮《しず》まりになっていらっしゃいます。」
といいました。田村麻呂《たむらまろ》は不思議《ふしぎ》に思《おも》って、
「ではさっそく、その地蔵《じぞう》さまと毘沙門《びしゃもん》さまにお参《まい》りをして来《こ》よう。」
といって、本堂《ほんどう》に祀《まつ》ってある勝軍地蔵《しょうぐんじぞう》と勝敵毘沙門天《しょうてきびしゃもんてん》のお像《ぞう》の前《まえ》に行ってみますと、どうでしょう。地蔵《じぞう》さまと毘沙門《
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