う荒《あら》えびすをもついでに攻《せ》め殺《ころ》してしまいました。

     三

 田村麻呂《たむらまろ》は奥州《おうしゅう》の荒《あら》えびすを平《たい》らげて、ゆるゆると京都《きょうと》へ凱旋《がいせん》いたしました。天子《てんし》さまはたいそうおよろこびになって、田村麻呂《たむらまろ》にたくさんの御褒美《ごほうび》をお授《さず》けになりました。そして改《あらた》めて征夷大将軍《せいいたいしょうぐん》という役《やく》におつけになりました。みんなはそれから後《のち》田村麻呂《たむらまろ》に田村将軍《たむらしょうぐん》という名《な》をつけて、尊敬《そんけい》するようになりました。
 田村麻呂《たむらまろ》は自分《じぶん》がこれほどの名誉《めいよ》を受《う》けることになったのも、清水《きよみず》の観音様《かんのんさま》にお祈《いの》りをした御利益《ごりやく》だと思《おも》って、都《みやこ》に帰《かえ》るとさっそく清水《きよみず》にお参《まい》りをして、ねんごろにお礼《れい》を申《もう》し上《あ》げました。
 さてこの時《とき》までも始終《しじゅう》不思議《ふしぎ》でならなかったのは
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