び返《かえ》して来《き》ました。お陰《かげ》で身方《みかた》は射《い》ても、射《い》ても、あとからあとから矢《や》がふえて、いつまでもつきるということがありません。ますますはげしく射《い》かけましたから、さすがに乱暴《らんぼう》な荒《あら》えびすも総崩《そうくず》れになって、かなしい声《こえ》をあげながら逃《に》げ出《だ》しました。味方《みかた》はその図《ず》をはずさず、どこまでも追《お》っかけて行きました。敵《てき》の大将《たいしょう》の高丸《たかまる》はくやしがって、味方《みかた》をしかりつけては、どこまでも踏《ふ》み止《とど》まろうとしましたけれど、一|度《ど》崩《くず》れかかった勢《いきお》いはどうしても立《た》ち直《なお》りません。そのうち高丸《たかまる》も田村麻呂《たむらまろ》の鋭《するど》い矢先《やさき》にかかって、乱軍《らんぐん》の中に討《う》ち死《じ》にしてしまいました。田村麻呂《たむらまろ》はこの勢《いきお》いに乗《の》って、達谷《たっこく》の窟《いわや》という大《おお》きな岩屋《いわや》の中にかくれている、高丸《たかまる》の仲間《なかま》の悪路王《あくろおう》とい
前へ 次へ
全11ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング