がって、雲《くも》のように見《み》えていたものが、だんだんはっきりと島《しま》の形《かたち》になって、あらわれてきました。
「ああ、見《み》える、見《み》える、鬼《おに》が島《しま》が見《み》える。」
 桃太郎《ももたろう》がこういうと、犬《いぬ》も、猿《さる》も、声《こえ》をそろえて、「万歳《ばんざい》、万歳《ばんざい》。」とさけびました。
 見《み》る見《み》る鬼《おに》が島《しま》が近《ちか》くなって、もう硬《かた》い岩《いわ》で畳《たた》んだ鬼《おに》のお城《しろ》が見《み》えました。いかめしいくろがねの門《もん》の前《まえ》に見《み》はりをしている鬼《おに》の兵隊《へいたい》のすがたも見《み》えました。
そのお城《しろ》のいちばん高《たか》い屋根《やね》の上に、きじがとまって、こちらを見《み》ていました。
こうして何年《なんねん》も、何年《なんねん》もこいで行《い》かなければならないという鬼《おに》が島《しま》へ、ほんの目をつぶっている間《ま》に来《き》たのです。

     四

 桃太郎《ももたろう》は、犬《いぬ》と猿《さる》をしたがえて、船《ふね》からひらりと陸《おか》
前へ 次へ
全18ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング