》を育《そだ》てました。桃太郎《ももたろう》はだんだん成長《せいちょう》するにつれて、あたりまえの子供《こども》にくらべては、ずっと体《からだ》も大きいし、力《ちから》がばかに強《つよ》くって、すもうをとっても近所《きんじょ》の村《むら》じゅうで、かなうものは一人《ひとり》もないくらいでしたが、そのくせ気《き》だてはごくやさしくって、おじいさんとおばあさんによく孝行《こうこう》をしました。
桃太郎《ももたろう》は十五になりました。
もうそのじぶんには、日本《にほん》の国中《くにじゅう》で、桃太郎《ももたろう》ほど強《つよ》いものはないようになりました。桃太郎《ももたろう》はどこか外国《がいこく》へ出かけて、腕《うで》いっぱい、力《ちから》だめしをしてみたくなりました。
するとそのころ、ほうぼう外国《がいこく》の島々《しまじま》をめぐって帰《かえ》って来《き》た人があって、いろいろめずらしい、ふしぎなお話《はなし》をした末《すえ》に、
「もう何年《なんねん》も何年《なんねん》も船《ふね》をこいで行くと、遠《とお》い遠《とお》い海《うみ》のはてに、鬼《おに》が島《しま》という所《ところ》がある。悪《わる》い鬼《おに》どもが、いかめしいくろがねのお城《しろ》の中に住《す》んで、ほうぼうの国《くに》からかすめ取《と》った貴《とうと》い宝物《たからもの》を守《まも》っている。」
と言《い》いました。
桃太郎《ももたろう》はこの話《はなし》をきくと、その鬼《おに》が島《しま》へ行ってみたくって、もう居《い》ても立《た》ってもいられなくなりました。そこでうちへ帰《かえ》るとさっそく、おじいさんの前《まえ》へ出て、
「どうぞ、わたくしにしばらくおひまを下《くだ》さい。」
と言《い》いました。
おじいさんはびっくりして、
「お前《まえ》どこへ行くのだ。」
と聞《き》きました。
「鬼《おに》が島《しま》へ鬼《おに》せいばつに行こうと思《おも》います。」
と桃太郎《ももたろう》はこたえました。
「ほう、それはいさましいことだ。じゃあ行っておいで。」
とおじいさんは言《い》いました。
「まあ、そんな遠方《えんぽう》へ行くのでは、さぞおなかがおすきだろう。よしよし、おべんとうをこしらえて上《あ》げましょう。」
とおばあさんも言《い》いました。
そこで、おじいさんとおば
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