あさんは、お庭《にわ》のまん中に、えんやら、えんやら、大きな臼《うす》を持《も》ち出《だ》して、おじいさんがきねを取《と》ると、おばあさんはこねどりをして、
「ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ。ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ。」
と、おべんとうのきびだんごをつきはじめました。
きびだんごがうまそうにでき上《あ》がると、桃太郎《ももたろう》のしたくもすっかりでき上《あ》がりました。
桃太郎《ももたろう》はお侍《さむらい》の着《き》るような陣羽織《じんばおり》を着《き》て、刀《かたな》を腰《こし》にさして、きびだんごの袋《ふくろ》をぶら下《さ》げました。そして桃《もも》の絵《え》のかいてある軍扇《ぐんせん》を手に持《も》って、
「ではおとうさん、おかあさん、行ってまいります。」
と言《い》って、ていねいに頭《あたま》を下《さ》げました。
「じゃあ、りっぱに鬼《おに》を退治《たいじ》してくるがいい。」
とおじいさんは言《い》いました。
「気《き》をつけて、けがをしないようにおしよ。」
とおばあさんも言《い》いました。
「なに、大丈夫《だいじょうぶ》です、日本一《にっぽんいち》のきびだんごを持《も》っているから。」と桃太郎《ももたろう》は言《い》って、
「では、ごきげんよう。」
と元気《げんき》な声《こえ》をのこして、出《で》ていきました。おじいさんとおばあさんは、門《もん》の外《そと》に立《た》って、いつまでも、いつまでも見送《みおく》っていました。
三
桃太郎《ももたろう》はずんずん行きますと、大きな山の上に来《き》ました。すると、草《くさ》むらの中から、「ワン、ワン。」と声《こえ》をかけながら、犬《いぬ》が一ぴきかけて来《き》ました。
桃太郎《ももたろう》がふり返《かえ》ると、犬《いぬ》はていねいに、おじぎをして、
「桃太郎《ももたろう》さん、桃太郎《ももたろう》さん、どちらへおいでになります。」
とたずねました。
「鬼《おに》が島《しま》へ、鬼《おに》せいばつに行くのだ。」
「お腰《こし》に下《さ》げたものは、何《なん》でございます。」
「日本《にっぽん》一のきびだんごさ。」
「一つ下《くだ》さい、お供《とも》しましょう。」
「よし、よし、やるから、ついて来《こ》い。」
犬《いぬ》はきびだんごを一つもらって、桃太郎《ももたろう》のあ
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