ぞろぞろついてくる家来《けらい》たちの数《かず》はそれはそれはおびただしいものでした。為朝《ためとも》は力《ちから》が強《つよ》いばかりでなく、おとうさんに孝心《こうしん》ぶかいと同様《どうよう》、だれに向《む》かっても情《なさ》けぶかい、心《こころ》のやさしい人でしたから、三|年《ねん》いるうちにこんなに大勢《おおぜい》の人から慕《した》われて、ほんとうに九州《きゅうしゅう》の王《おう》さま同様《どうよう》だったのです。それでだれいうとなく、為朝《ためとも》のことを鎮西八郎《ちんぜいはちろう》と呼《よ》ぶようになりました。鎮西《ちんぜい》というのは西《にし》の国《くに》ということで、九州《きゅうしゅう》の異名《いみょう》でございます。

     三

 さて為朝《ためとも》は一|日《にち》も早《はや》くおとうさんを窮屈《きゅうくつ》なおしこめから出《だ》してあげたいと思《おも》って、急《いそ》いで都《みやこ》に上《のぼ》りました。ところが上《のぼ》ってみておどろいたことには、都《みやこ》の中はざわざわ物騒《ものさわ》がしくって、今《いま》に戦争《せんそう》がはじまるのだといって、人
前へ 次へ
全31ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング